派遣法に違反しないための5つのポイント!違反例や相談先なども解説
労働者派遣法は、1986年に施行され、世の中の情勢にあわせて改正を繰り返しています。
労働者派遣法に違反した企業は罰則を受けるため、派遣社員(派遣労働者)もトラブルに巻き込まれる可能性があります。
トラブルに巻き込まれないためには、派遣社員も労働者派遣法について最低限の知識をつけておくのがおすすめです。
本記事では、労働者派遣法に違反しないための5つのポイントをまとめました。過去に起こった労働者派遣法の違反例や、罰則の内容も紹介します。
ぜひ最後までぜひご覧ください。
目次
労働者派遣法とは
労働者派遣法とは、派遣社員の立場を保護するための法律です。派遣社員は、自由な働き方ができる反面、正社員に比べると立場が弱くなりやすいです。
派遣社員が弱い立場につけこまれ、不利な待遇・条件で働くことを迫られないために、労働者派遣法が存在します。
労働者派遣法は、改正の度に派遣社員の立場を守る法律として規制が強化されています。
労働者派遣法に違反しないためのポイント5つ
労働者派遣法に違反しないため、重要な以下の5つについてお伝えします。
- ①労働者派遣の期間制限
- ②派遣社員へのキャリアアップ支援
- ③違法派遣の直接雇用義務の発生
- ④同一労働同一賃金
- ⑤元従業員の派遣受け入れ規制
労働者派遣法の中でもポイントとなる項目のため、それぞれ見ていきましょう。
①労働者派遣の期間制限
同じ会社の同じ部署で派遣社員を受け入れる期間は、原則として最大3年という期間制限があります。
たとえば、2021年1月1日が派遣期間の起算日となる場合、3年後の2024年1月1日までが派遣の受け入れ可能期間です。
なお、3年の間に派遣社員が交代することは問題ありません。派遣のAさんが1年間働いたら、次に来る派遣のBさんはあと2年間その部署で働けます。
また、3年間同じ部署で働いた派遣社員は別の部署へ移動したり、他の派遣社員と交代で派遣されたりします。
詳しくは以下の記事で解説しています。
派遣の3年ルールとは?安定して勤める抜け道も含めわかりやすく解説
②派遣社員へのキャリアアップ支援
派遣事業を営む会社では、派遣社員の希望に応じてキャリアアップ支援を行うことが求められます。派遣社員は上述した期間制限もあり、最大3年間しか同じ企業の部署で働けません。
そのため、「次のキャリアに繋がるスキルをどう身につけるのか?」が派遣社員の悩みです。
派遣社員がキャリアアップを諦めないために、派遣会社は必要に応じて教育研修やスキルアップ訓練などを用意します。
弊社「ビッグアビリティ」は、派遣社員のための入社時研修や、ロールプレイングを取り入れた教育研修などを実施しています。また、スキルアップサポートの制度も用意しています。
③違法派遣の直接雇用義務の発生
違法派遣が行われた場合、派遣先企業はその派遣社員を直接雇用しなければなりません。直接雇用の義務は、労働契約みなし制度により2015年に施行されました。
派遣先企業は違法派遣を受け入れたことで、対象の派遣社員に対し雇用契約を直接申し込んだとみなされます。
違法派遣になるのは、以下のような場合です。
- 派遣禁止業務で派遣した場合
- 厚生労働省が無許可の派遣事業者から労働者を雇った場合
- 偽装請負や多重派遣をした場合など
なお、派遣先企業が対象の派遣社員を直接雇用した場合は、もともとの労働条件を継続した雇用が必要です。
④同一労働同一賃金
同一労働同一賃金は、直近の改正でもっとも話題になった内容と言えます。同一労働同一賃金とは、「同じ職場(同じ業務)に携わる労働者は、雇用形態で差別されることがあってはならない」という決まりです。
大企業では、2020年4月より同一労働同一賃金が施行され、中小企業では2021年4月から施行されました。派遣先企業は、以下いずれの方式で同一労働同一賃金の待遇を決定します。
待遇の決定方法 | 特徴 |
---|---|
派遣先均等均衡方式 | 派遣社員の待遇を、派遣先企業の正社員などの待遇に合わせる方式 |
労使協定方式 | 派遣事業者が派遣社員と労使協定を締結し、一定要件を満たす待遇にする方式 |
同一労働同一賃金は「同じ仕事内容なのに正社員は給料が高く、派遣社員は給料が低い」といった不合理な待遇を解消することを目的にしています。
⑤元従業員の派遣受け入れ規制
離職から1年以内の元従業員を、企業は派遣社員として受け入れることができません。元従業員の派遣受入規制があるのは、会社側に有利な雇用条件を労働者へ背負わせないためです。
例として、元従業員のAさんが離職し、同じ企業で派遣として雇われたケースを考えてみましょう。Aさんは会社の業務内容を把握しているため、離職前と変わらない業務を任せられる可能性があります。
しかし、Aさんの雇用条件が正社員の時より下がっている場合、Aさんの負担だけが増えてしまいます。
このように派遣社員が不利な状況にならないよう、離職から1年以内の元従業員は派遣受け入れが規制されているのです。
労働者派遣法の違反例
ここでは、労働者派遣法において実際に違反となったケースを紹介します。
- ①外国人労働者の「不法就労」
- ②30日以内の「日雇い派遣」
- ③派遣先からさらに派遣される「二重派遣」
- ④派遣先を特定の会社に限定する「専ら派遣」
それぞれ見ていきましょう。
①外国人労働者の「不法就労」
飲食店のフランチャイズ経営をしていた企業では、外国人労働者の不法就労により罰則が科せられています。
在留期間が過ぎている外国人や、就労が許可されていないビザを保有する外国人は、日本で働くことができません。
働く権利のない外国人を雇用すると、事業主には罰金や事業許可の取り消しなどが言い渡されます。
外国人の不法就労を避けるためには、雇用前の身分確認や外国人雇用状況の届出を徹底することが重要です。
②30日以内の「日雇い派遣」
ある人材紹介・人材派遣会社では、30日以内の日雇い派遣を実施したとして行政処分が下されました。
30日以内の雇用契約を結ぶのは日雇い派遣に該当し、労働者派遣法では原則禁止です。日雇い派遣の例外が認められるケースもありますが、許可されている業務や人材には制限が設けられています。
30日以内の短期雇用が禁止されているのは、派遣社員の不安定な雇用状況を改善するためです。あまりにも短期の派遣期間は、労働者の雇用管理が適切になされない恐れがあります。
そのため、派遣社員の保護に欠けるという観点から、日雇い派遣は原則禁止となっています。
③派遣先からさらに派遣される「二重派遣」
Web制作やシステム開発を請け負う会社では、出向と称して労働者を「二重派遣」したことで処分を下されました。
通常、派遣社員は派遣会社と雇用契約を結び、そこから派遣会社が派遣先企業と契約を結びます。派遣社員は、派遣契約を結んだ派遣先企業でしか働けないのが決まりです。
しかし、二重派遣では、派遣先企業からさらに違う企業へ派遣されます。
最終的に働く企業では、聞いていたのとは違う業務内容が指示されたり、元々の雇用条件と違ったりといったトラブルが起こり得ます。
理不尽があっても派遣社員は立場上抗議しにくいため、二重派遣は禁止されているのです。
④派遣先を特定の会社に限定する「専ら派遣」
特定の企業にのみ労働者を派遣することは「専ら派遣(もっぱらはけん)」と呼ばれ、処分対象となります。
たとえば、「派遣会社Aに登録している人は、すべてB社およびB社のグループ企業に派遣される」といったケースなどが専ら派遣に該当します。
専ら派遣で特に注意が必要なのは、グループ企業内へ派遣する場合です。
グループ企業に派遣する人の割合は、派遣社員全体の8割以下でなければなりません(ただし、60歳以上の定年退職者は制限の対象外)。
派遣先企業が複数社あっても、派遣先企業に偏りが見られる場合は専ら派遣とみなされる場合があるため要注意です。
労働者派遣法に違反した場合の罰則
労働者派遣法に違反した場合、どのような罰則が課せられるのでしょうか。
これまでに労働者派遣法に違反したケースでは、以下のような処分が下されています。
- ①業務改善命令
- ②事業停止命令
- ③事業廃止命令
- ④許可の取り消し
それぞれの罰則について具体的に見ていきましょう。
①業務改善命令
業務改善命令は、違反項目に対して関係機関が是正を指示することです。
違反項目により改善命令の内容も異なりますが、一般的には違反内容の調査や、点検および改善措置を講ずることが命じられます。業務改善命令を下された企業は、指示に従って改善・措置計画書などの提出が必要です。
改善命令に従わなかった場合、さらに重い処分が下される可能性があります。
②事業停止命令
再三の指導にもかかわらず改善が見られない企業には、事業停止命令が下されます。
事業停止命令は、違反内容に対し改善が確認できるまで事業の停止を命ずることです。処分を下された企業には弁明の機会が与えられるため、違反項目の改善を証明できれば事業を再開できます。
事業停止期間中は、運営方針の再考や違反項目の改善措置などに努めなければなりません。
③事業廃止命令
事業廃止命令は、2015年まであった特定派遣事業において下されていた処分です。
以前は、派遣形態として一般派遣と特定派遣がありました。「特定派遣は派遣期間が無期限」という特徴がありましたが、2015年の労働者派遣法改正により現在は許可制に統一されました。
労働者派遣法改正に伴い、特定派遣事業者は2018年9月末までに派遣事業の許可申請を行っています。
派遣事業が許可制になってからは、次に紹介する許可の取り消しがもっとも重い処分となっています。
参考:「(旧)特定労働者派遣事業」は行えなくなります! – 厚生労働省
④許可の取り消し
許可の取り消しは、労働者派遣事業の許可が取り消されるため、実質の廃業扱いです。
許可の取り消し処分は、労働派遣事業の許可要件を満たせない場合に下されます。
たとえば、会社の役員が禁錮以上の刑に処されて5年を経過していない場合などは許可の欠格事由に該当します。
許可の取り消し処分の基準は明確にされているため、役場の窓口や電子政府の総合窓口(e-gov法令検索)などで確認しましょう。
なお、許可の取り消しは重い処分のため、処分決定前に弁明の機会として与えられるのが「聴聞の手続き」です。
長文の手続きでは、役場の担当職員に対し口頭での意見陳述、証拠書類の提出や質問の機会が与えられます。
労働者派遣法の違反に気付いたときの相談先
派遣社員が労働者派遣法の違反に気付いた場合は、どこに相談すればよいのでしょうか。
派遣先企業の違法行為であれば、登録している派遣会社にまずは相談してみるのがおすすめです。
また、以下の機関に相談する選択肢もあります。
- ハローワーク
- 労働基準監督署
- 労働相談情報センター
それぞれ見ていきましょう。
ハローワーク
ハローワーク(公共職業安定所)では、労働者の全般的な相談を受け付けています。直接ハローワークの窓口で相談に来たことを伝えるか、電話で相談することが可能です。
また、「労働者派遣事業適正運営協力員制度」について知っておくのもおすすめです。
この制度では、労働組合のメンバーから構成された協力員が、派遣会社や労働者の相談を受け付けています。
派遣労働に関して専門的な助言が得られる可能性があるため、協力委員への相談も検討してみましょう。
労働基準監督署
労働基準監督署は、労働関係の法令を遵守しているか確認・指導する機関です。
労働基準監督署は全国の都道府県に設置されており、違法行為をしている企業に対し是正勧告や立ち入り調査を実施します。
労働基準監督署への相談は、電話や訪問により可能です。
ただし、相談する際は違法行為している証拠の提出を求められる可能性があります。労働基準監督署へ相談する際は、証拠となる書類やメールなどを持参するようにしましょう。
労働相談情報センター
労働相談情報センターは、労働局の出先機関として市区町村単位で設置されています。
労働基準監督署は企業への立ち入り調査などを行いますが、労働相談情報センターは労使間の問題を解決するための仲介役といった位置づけです。
労使双方が望んだ場合に、労使間の話し合いや調停を実施します。労働相談情報センターでも、電話や訪問による相談を受け付けています。
また、場所によっては弁護士に相談できるコーナーを設けているため、気になる場合はお近くのセンターの情報を調べてみましょう。
優良な派遣会社を選ぼう
派遣として働くなら、登録する派遣会社選びが非常に大切です。
派遣先企業で困ったことがあった場合、まず相談者となるべきなのは派遣会社です。
そのため、「人を派遣したからそれで終わり」といった全くサポートのない派遣会社は避けるべきでしょう。
優良な派遣会社を選ぶひとつの指標として、「優良派遣事業者認定制度」をクリアしているか確認するのがおすすめです。優良派遣事業者認定制度とは、一定基準を満たした派遣サービスのみ認定される制度です。
厚生労働省の委託機関により認定されるため、信頼できる認定基準となります。優良派遣事業者認定制度は安心して働ける派遣サービスを提供している証明です。
派遣会社選びの際は参考にしてみましょう。
まとめ:労働者派遣法の違反ケースを理解しておこう
この記事では、労働者派遣法に違反しないために知っておきたいポイントや、過去にあった違反例などを紹介しました。
派遣社員が不利な立場に陥らないよう、日本には労働者派遣法が存在します。
労働者派遣法は時代や情勢にあわせて改正を繰り返し、派遣社員の労働環境はどんどん改善されています。
労働者派遣法の違反トラブルに巻き込まれないためには、優良な派遣会社を選ぶことが非常に大切です。
「ビッグアビリティ」は、優良派遣事業者認定制度の認定を受けており、派遣社員の方が安心できる職場探しをサポートしています。
また、「協会けんぽ」や「有給休暇」や「スキルアップサポート」などのバックアップ体制も整えているため、働きやすいです。さらに、都内を中心に高時給な求人案件も豊富に紹介しています。
1分で無料登録できます。
信頼できる派遣会社と派遣先企業を選んで、トラブルのない働き方を目指しましょう。